研究開発日誌

CG研究・開発のちょっとしたメモ書き

Gloss Perception in Painterly and Cartoon Rendering

2015-01-05 NPR

Gloss Perception in Painterly and Cartoon Renderingは,Painterly Renderingのハイライトの質感知覚に関する評価実験をまとめた論文です.

概要

様々なNPR手法が提案されていますが,NPRで生成した手法がどのくらい質感を上手く表現できるかはよくわかっていません.そこで,この論文では,ハイライト効果に注目し,NPR表現の質感知覚に関する評価実験を行っています.ハイライトパラメータ(contrast, sharpness)の強度の範囲がNPR効果を加えたことによりどのように変化したかを評価実験から求め,「知覚されたハイライトパラメータ」と「NPR効果を加える前のハイライトパラメータ」の対応関係を分析しています.分析結果を学習し,表現したい質感を実現するためのハイライトパラメータの逆推定を行う手法も提案しています.

詳細

質感パラメータ

  • Contrast 拡散反射係数と鏡面反射係数から計算されます.基本的には,鏡面反射係数をいじった時にハイライト効果がどう変わるかを表していますので,*ハイライト全体が見えやすいかどうか*をコントロールするパラメータになります.

  • Sharpness [Ward92のBRDFモデル]のroughnessパラメータ$\alpha$からsharpnessを$d=1-\alpha$として計算しています.Phongモデルのshinenessパラメータのように,*ハイライトが鋭く現れるかどうか*をコントロールするパラメータになります.

評価実験のユーザータスク

ユーザータスクのUIウィンドウには同じ形状で質感が異なる以下の2枚の画像が表示され,質感の対応付けを行っていきます.

  • ターゲットのNPR画像 様々なバリエーションのNPR画像をランダムに表示し,この画像がどう知覚されるかを評価するタスクを行います.

  • フォトリアルな画像 下にContrastとSharpnessを調整するスライダーバーがついていて,ターゲットのNPR画像の質感と同じになるようにユーザーがフォトリアルな画像の質感を調整します.

## ターゲット画像のバリエーション ブラシストロークのサイズやアニメ化フィルタの強度等を調整して,主にPainterly RenderingとCartoon Renderingの範囲内でマテリアルのバリエーションを作成します.それにハイライトパラメータの変化を加えたものがターゲット画像のバリエーションになります.Painterly RenderingとCartoon Renderingではありませんが,Gaussianフィルタを使ってぼかした画像もターゲット画像のバリエーションに加えて質感知覚の評価実験を行っています.

評価実験結果

  • Painterly Rendering ハイライトパラメータの範囲が圧縮されたようになります.つまり,ハイライト効果が弱い質感はハイライトが強く知覚され,ハイライト効果が強い質感はハイライトが弱く知覚されます.ブラシサイズを大きくすると,質感知覚の圧縮度合が高まります.

  • Cartoon Rendering 陰影の境界をはっきりさせる効果があるので,基本的にハイライトが強く知覚されるようになります.Contrastパラメータの値が小さい場合は,量子化の影響でハイライト自体が消えてしまうので,質感知覚の変化を上手く評価できません.

  • ぼかした画像 Painterly Rendering同様ぼかした画像でもハイライトパラメータの範囲が圧縮されたようになりますが,圧縮度合はぼかし画像の方が強くなります.同じブラシサイズとフィルタカーネルを使った場合,Painterly Renderingの方がハイライトの質感知覚の幅が広いので,抽象化により質感が単純化されてはいますが詳細な部分も上手く残していると言えます.

終わりに

表現したい質感を実現するためのハイライトパラメータの逆推定を行う手法以降は省略しますが,質感知覚を強める手法も紹介されています.評価実験には,Amazon Mechanical Turkが使われていて,クラウドソーシングも知っておくと色々使い勝手が良さそうです.

参考文献

[1] Gloss Perception in Painterly and Cartoon Rendering: http://dl.acm.org/citation.cfm?id=2451244 [2] Measuring and modeling anisotropic reflection: http://dl.acm.org/citation.cfm?id=134078 [3] Amazon Mechanical Turk: http://aws.amazon.com/jp/mturk/